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『裁判長!話が違うじゃないですか-国民に知らされない裁判員制度の「不都合な真実」』/池内ひろ美・大久保太郎



弁護士 Barl-Karthによる peace-loving 日記で紹介されていて、内容に興味があったので読んでみた。あまり断定的な言い方をするのは好みではないが、裁判員制度に巻き込まれる可能性のある、日本の法曹資格を持たない人にとっては必読の本ではないかと思った。裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)の条文(抄録だけど)もついているのは便利。
ニュース等で漏れ聞こえてくる報道だけからしても、裁判員制度が、まともな制度からは程遠いものであることについて、想像には難くないが、この本を読むと、情緒的な面(「市民感情」を取り入れる制度のはずが、「面倒くさいことには巻き込まれたくない」という市民感情を取り入れないのは矛盾しているように思うのだが)および法理論面のあちこちに問題があることは、理解できた。

情緒的なところは1部で、出てきそうなところは拾い上げられているように思われた(全部が全部実例なのかどうか、疑問はあるが、それは大した問題ではないだろう)。
一つだけ個人的な経験に関連することを書けば、大学生のときに、法医学の授業で、いきなり司法解剖に立ち会った経験がある。その日は後から思い出して気分が悪くなった。それ以前の回でもスライドで相当すごいものを見ていて、一定の慣れはあったつもりだったが、それでも気分は悪くなったことからすれば、何も知らないで、いきなり、ビジュアルで強烈なものを見せられると具合が悪くなるのは当然のように思われる。

法的な側面については2部(作者2人の対談:法律面での問題点が噛み砕いて説明されている)での説明が端折られているような気がした。その内容はより端的な形で3部の模擬・裁判員法違憲決定で示されている。

模擬決定理由の目次部分の引用


一 憲法八〇条一項(裁判官の任命方法)違反
二 憲法三七条一項(公平な裁判所の保証)違反
三 憲法七六条三項(裁判官の独立の保障)違反
四 憲法三二条(裁判を受ける権利の保障)違反
五 裁判員候補者および裁判員等の基本的人権の侵害
六 「公判手続の更新」規定(裁判員法六一条)の違憲性
七 部分判決制度(裁判員法七一条以下)の違憲性
八 結論



この制度、裁判員になった場合の感情面・肉体面での負担や仕事・生活に対する影響、制度の不備については、色々思うところがあったが、法理論的に見ても、問題があるというのは、ここで議論が展開されるのを見るまでは実感できていなかった。勉強不足を恥じるばかりである(どこもかしこも勉強不足だけど)。特に、模擬決定の六、七で論じられているところを読むと、無理矢理にでも制度のつじつまを合わせようとしているものの、あわせ切れていないところがよく分かる。

模擬決定の内容について、当否を論じられるほどの能力があるとは到底思えないものの、素人目線で読むと、二は、理由付けが簡単すぎやしないか(「公平な裁判所」の定義が見えてこないからそう感じるのだが)とか、五は国民の多数が疑問を持っていることについての根拠のデータの引用とかないのかな、とか思ったりする(追記:決定としては特に根拠はいらないのかもしれない。ただ、あとがきにあるように、模擬決定の形でこの制度の問題点を示すということからすればあってもいいのではないかと思う)。

ともあれ、参加させられる側にとって負担ばかり大きい、問題だらけの制度であることは間違いないと思うので、これ以上「被害」を広げないためにも一旦は止めたほうがいいと思う。推進しようとしている側が自己目的化、郷原信郎さんの言い方を借りれば「思考停止」しているようなので、難しいのかもしれないが。

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