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条項対訳 英文契約リーディング / 長谷川俊明 (著)


英文契約について、古くから日本語の著書を多数出されている長谷川先生の本ということで買ってみた。結論としては、発想は面白いし、手元においておいて損はないと思う一冊。

英文契約の各種の条項について、横断的に、同種の条項を比較しながら眺めてみて、それぞれの条項の意義というか機能を理解しようという試みはすごく野心的だと思うし、しかも、いわゆる一般条項に限らず、各種取引における取引ごとに特有の「実体条項」についても対象としているというのもこれまた野心的で(幅広い取引類型をカバーするのは、それほど簡単なことではないのではないかと思うので)、野心的かつ便利な一冊になっていると思う。

個々の条項も然ることながら、それ以外にもなるほどという指摘も多く、それだけでも手元においておく価値は十分あると思う。引用はしないけど、例えば、概略次のような指摘とかは、長年日本で英文契約に関する法務を見てこられた著者でなければなかなか言えないのではないだろうか(有名なこの著者が言っているということは、年長者を説得するうえでも有用かもしれないし…)。
  • 英米で弁護士実務をするのでない限りは、徹底して法律英語を学ぶ必要はない。日本企業で必要なのは、日本法と比較しながら法律英語の基本的な概念を理解して使いこなせる人材。
  • 国際契約の交渉の中で、準拠法と裁判管轄は互いになかなか譲らないが、取引分野の法律には、よほど特殊な国を除けばそれほど大きな違いはないが、手続法は国ごとの差異が大きいし、慣れない外国で闘うデメリットもあるので、どちらかしか自己の有利にできない立場ならば、裁判管轄を選ぶのが良い。

ただ、細かいところで、いくつか引っかかった点があった。

ひとつは、それぞれの条項ごとに、基本的な条項を提示して、そこからのバリエーションを示す、というのが基本的なフォーマットなんだけど、バリエーションはもっと欲しいし、提示されているそれぞれの事例ごとの比較について、基本的な条項からプラスされた部分については記載があるけど、その逆に、書いていない部分について、実務上不利になり得る(実際は取引の文脈の中で考えないと本当に不利になるかどうかはわからないのだけど)、というような指摘があった方がより立体的に理解できるようになったのではないかと思った。

それから、いくつかの条項については、僕の勘違いがあるのかもしれないけど、もうちょっと解説があった方がよかったのではないかと思った箇所もあった。例えば、解釈に関する一般条項の例の

This Agreement shall be fairly interpreted and construed in accordance with its terms and without strict interpretation or construction in favor of or against either Party.

については、おそらくContra Proferentem(起草者に不利に解釈する原則)を念頭においた規定だろうから(でないと、どちらかの当事者に有利または不利になる解釈をしないように、とは書かないのではないかと思うので)、Contra Proferentemについての説明があっておいて然るべきだと思った。日本法では出てこない概念だし。

また、完全合意条項のところで、一般的な例としてあげられている、

This Agreement contains the entire and only agreement between the parties relating to the subject matter hereof and supersedes and replaces any and all prior or contemporaneous agreements or understandings, written or oral, express or implied, between the parties relating to the subject matter thereof.

で、any and all prior or contemporaneous agreementsとcontemporaneousまで入っているのは、おそらくcollateral agreement(契約書が作られたときに、別になされた副次的な約束。この契約の内容とは別個の約束であるとして、Parol Evidence Ruleの例外として認められることがある)の存在も否定しようとしているのではないかと思うが、もしそうなら、説明しておいてほしかった。
(その次にシンプルな例としてあげられているものについては、any and all prior relevant agreementsとなっていて、contemporaneousなものは記載されていない…)

まあ、いずれについても些細な話だと思うのだが、経験豊かな著者の頭のなかにあることを、もっと上手く引き出してほしいなあというのが編集者の皆さんへのお願い事項、というところか。適宜改定していく中でますます内容がpower upしていくことを期待しております。


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【本】条項対訳 英文契約リーディング ― 英文契約書作成は日本の法務パーソンの永遠の課題(その1)

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