スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

整理解雇の判例:東洋酵素事件の判決文を読んでみた

今さらながらかもしれないが、JALの整理解雇事件についての判決が出て、東京地裁は元パイロット76人の整理解雇を有効としたとのこと。

会社更生手続き中だった日本航空が10年末に整理解雇した元パイロット81人のうち76人が「解雇は無効」として日航側に労働契約上の地位確認と解雇後の賃金支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁(渡辺弘裁判長)は29日、整理解雇は有効とし、請求を棄却した。渡辺裁判長は「解雇権の乱用は認められない」と述べた。会社更生手続き中の整理解雇への司法判断は初めて。原告は控訴する方針。30日には同じく整理解雇された元客室乗務員72人による訴訟の判決が同地裁である。


客室乗務員側でも、整理解雇を認める旨の判決が出たとのこと。

整理解雇というと、いわゆる整理解雇の四要件を定めたというのが東洋酵素事件で、この件もリンクした報道を見るかぎり四要件にそった形で判断をしたようなのだ。ここで、最高裁のサイトの中を見ると東洋酵素事件の判決文があったので、読んでみた。

(この四要件というのが、どこまで維持されているのか、ということについて、色々議論はあることも知っているが、ここではとりあえず無視してみる)
事案としては、採算性の合わなかったアセチレン事業部を閉鎖するにあたり、事業部の全員(ただし管理職は除く)を整理解雇したというもので、ここでは、裁判所が整理解雇を認めており、その理由付けの中で、本件解雇が同社の就業規則上、解雇を可能にする「やむを得ない事業の都合」に該当するかどうかを検討する中で、いわゆる四要件が整理されているということなので、一応拾ってみた。

事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむをえない必要に基づくものと認められる(必要性)*1業績の不振は、一時的なものではなく、同業各社に共通する業界の構造的な変化と会社に特有な生産能率の低いことに起因し、その原因の除去はいずれも困難であり、同部門の収支の改善はほとんど期待することができず、このままの状態で漫然と放置するときは、主力部門が設備投資その他において同業各社との競争にさらに大きく立ち遅れ、大手同業各社との企業格差が拡大し、ひいては会社経営に深刻な影響を及ぼすおそれがあつたことが明らかであるから、その経営の安定を図るため、会社の採算上多年マイナスの要因となつているアセチレン部門を閉鎖するに至つたことは、企業の運営上やむをえない必要があり、かつ合理的な措置。
事業部門に勤務する従業員を同一又は遠隔でない他の事業場における他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がない場合、あるいは右配置転換を行つてもなお全企業的に見て剰員の発生が避けられない場合であつて、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に使用者の恣意によつてなされるものでないこと(解雇回避努力)当時全社的に希望退職者を募集することによつて会社経営上大きな障害が生ずることを危惧したのはあながちこれを杞憂と
して理由なしと断ずることはできない。
具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること(人選基準の合理性)アセチレン部門は他部門とは独立した事業部門であり、これを全面的に廃止したことにより企業全体としての過員数が一層増加するに至つたのであつて、この過員数の増加をくいとめるため、管理職以外のアセチレン部門の従業員全員を整理解雇の対象者とすることには、当時としては相当な理由があつた。
解雇につき労働協約又は就業規則上いわゆる人事同意約款又は協議約款が存在するにもかかわらず労働組合の同意を得ず又はこれと協議を尽くさなかつたとき、あるいは解雇がその手続上信義則に反し、解雇権の濫用にわたると認められるとき(手続きの妥当性)*2アセチレン部門の赤字が逐年増加しており、会社経営上放置しがたい状況にあること並びに同部門における人員削減と作業能率の向上が急務であることを繰り返し説明していたこと及びこれが実現できないときは、同部門の存廃が早晩検討されなければならないことも会社側から説明されていたことが認められ、、会社が組合と十分な協議を尽くさないで同部門の閉鎖と従業員の解雇を実行したとしても、他に特段の事情のない限り、右の一事をもつて本件解雇通告が労使間の信義則に反するものということはできない。


*1:「事業部門の操業を継続するとき、又は右事業部門の閉鎖により企業内に生じた過剰人員を整理せず放置するときは、企業の経営が全体として破綻し、ひいては企業の存続が不可能になることが明らかな場合でなければ従業員を解雇し得ないものとする考え方には、同調することができない」とあるのも、個人的には重要に思われるのだが…。
*2:ただし、これについては「これらは、解雇の効力の発生を妨げる事由であつて、その事由の有無は、就業規則所定の解雇事由の存在が肯定されたうえで検討されるべきものであり、解雇事由の有無の判断に当たり考慮すべき要素とはならないものというべき」としているので、他と同列と扱うべき話とは、ここではなっていない。書き方からすると少なくとも立証責任はこの要件については、労働者側にあると見るべきなのだろう。


ちなみに、ここまで書いた後で、さらに検索していたら、この件の後日談を含む文書が出てきた。文中にあるように労働者側からのみの聞き取りだけど、本件が更に最高裁に行き、最高裁決定後もさらにもめ続けたこと、高裁判決では出てこない労働者間ならびに労使の対立、および、結局原告の半数近くが復職して、その中には元の職場で定年まで勤務した人(三菱樹脂事件みたいだ)がいたりことなど、訴訟に出てくる部分が紛争のごく一部でしかないこともわかって、ちょっと微妙な気分(「事件は法廷で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というところか)になってしまった。

(この文書は、この件のその他の分析(地裁判決との差異とか)に限らず、それ以外の部分も興味深いけど、まだ読めていない)。


冒頭のJALの件については、少なくとも4要件(要件なのかどうかそれ自体に議論があるが…)のうち、1つめについては、更生計画の要旨を見るかぎり、計画中に人員削減について記載があるようだし、その手段としての早期退職制度の記載もあるようだから、それが十分な効果を産まないなら整理解雇に行くのはある意味当たり前だと思う。特にJALの従業員待遇は良かったということは有名だったと理解しているし、それは裏を返せば人件費の高さに繋がっていて、個々人の待遇の引き下げと並行して、人員削減の必要性は高かったのではないか。となると、整理解雇の必要性について争うのは厳しいのではないだろうか。他の3つについては、更生手続前後の具体的な状況次第というところがあると思うから、わからないけど。
整理解雇時の管財人のコメントからは、悩んだ上での判断というところは伝わってくるように思う…もっとも、従業員側から見て、それがどう評価されるのかはよくわからないけど)




コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

dtk

Author:dtk

日本にある企業の法務部署で働いています。
*コメント等で私に言及するときは
"dtk"でお願いいたします。

旧ブログ

ITエンジニアのための契約入門 iPod touch/iPhone用にリリースされました。詳しくはiTunesAppStoreから入手可能

初めてコメントいただく際には「このblogについて」もご覧いただければ幸いです。

カビバラさん時計
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

twitter
    follow me on Twitter
    カウンター
    Amazon.co.jp

    ブログ内検索
    RSSフィード
    リンク
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。