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解雇・退職 (シリーズ働く人を守る) /徳住 堅治 (著)



本屋で新刊で出ているのを見つけたので、買ってみた。労働者側のベテラン弁護士さんが解雇・退職に関する法制度および実務に関して書かれたもの。ご自身が代理人を務めているケースの実例も交えつつ論じている。個性のはっきりした本で、相性のあわない人も多いかもしれないけど、いくつかの意味で、企業法務の人にとっても読む価値はあると思う一冊。
個人的に良かったと思ったのは次の点。
  • 判例の紹介が広範なところ。
  • 解雇を争うときの争い方については、多様な選択肢があって、労働法の教科書とかを読んでいても、複数ある選択肢の中から、どれを選ぶのか、よく見えて来なかったけど、その辺の争い方について、実務を踏まえた考え方の解説が分かりやすい。(図表化されている部分が特に有用と思われたので、ここに書いてみる)
  • ①紛争解決の内容・
     水準
    解雇事案で、金銭解決を拒否して、職場復帰を追求する場
     合は、仮処分・通常訴訟の選択を考えます。
    金銭解決について、権利関係を踏まえた水準の解決を求め
     る場合は労働審判・仮処分・通常訴訟を選択し、解決水準
     を柔軟に考える場合は行政ADRを選択します。
    ②労使で同意が図れ
     る可能性
    労使双方、または、どちらか一方が和解の席につかないと
     か、和解を絶対的に拒否することが予想される場合は、仮
     処分・通常訴訟を選択します。
    和解の可能性がある場合には、労働審判、あるいは行政
     ADRを選択します。
    ③解決までの期間・
     迅速性
    1年以上かかってもよいから、しっかり争いたいと考える
     場合あ、通常訴訟を選択します。
    3~4ヶ月以内で解決したいと考える場合は、労働審判・
     仮処分を選択します。
    極めて短期間に解決したい場合は、都道府県労働局のあっ
     せんを選択します。
    ④証拠確保の程度・
     裁判の結果の見通
     し
    勝訴の見込みの高い場合、逆に、じっくり争わないと解雇
     無効を立証できない場合は、通常訴訟を選択します。
    書証だけで解雇無効が疎明できる場合は、仮処分を選択す
     ることもあります。
    労働審判は、勝訴の見込みが高い場合でも、逆に、必ずし
     も有利でなくとも調停成立の可能性がある場合には、選択
     することがあります。
    ⑤保全の必要性解雇無効を徹底的に争いたくても、預金や資産があって保全
    の必要性がない場合には、仮処分は選択してはいけません。
    いきなり通常訴訟を選択することになります。
    ⑥費用(法定費用、
     弁護士費用)
    お金を全く掛けられない場合は、行政ADRを選択します。
    労働審判の本人申立も増えています。ただ、自己の言いた
     いことをきっちり主張し、和解に際してもきっちり要求す
     るために専門家の弁護士に依頼したほうがベターです。法定
     費用について、労働審判は通常費用の半分ですが、弁護報
     酬は通常費用の概ね3分の2です。
  • 地味だけと、法令上の解雇制限が丹念に拾ってあってリスト化してあるところ。こういうのを作ろうとすると漏れそうなので、誰かきちんと作ってくれていると助かりそう(今のところ使う必要はないけど)。
  • 解雇を争って和解する際の、税務上のインパクトまできちんと視野に入っていること。解雇で金銭的に自由が効かないこともあるかもしれないので、そういうときには、特にそこは重要だと思う。

逆に個人的に「どうよ、それは」と思った点は一つだけ。企業側と対峙する労働者側の弁護士さんということもあってのことだろうけど、全体的に左翼臭がして、何だかなあ、という気がしたこと。整理解雇についての判例の揺れ動き方が、企業よりだったことについても、一部のものについて「偏向判決」と書いてしまうセンスとかにそういう臭いを感じてしまった。
(ついでに、代理人としての弁護士という以上に個人の心情のようなものが出てきていて、それがプラスに働く面もあるけど、個々の案件との関係で、マイナスに働く状況もあるのではないか、という変な心配をしてしまった。)

今まであまり意識したことがなかったけど、普段見ている労働法は、やはり使用者側の労働法で、労働者側の労働法は、実は、使用者側のそれとは違った部分があるのかもしれない。

実際、一人の労働者として、自分の不当解雇リスクにどう対応するか、という意味では本書は有用だと思う。もっとも冒頭に「本書は、退職勧奨や解雇通告を受け、悩む社会人をサポートする実践の書です。解雇という陥穽がいつ忍び寄るか分からない、現代の社会人への警世の書でもあります。」というくだりは、「警世の書」までは言い過ぎではという気もしたが。それと、いずれにしても、法務の職種の場合、解雇不当を争うというのは、次の転職との関係でマイナスになりそうな気がするが…。

あと、微妙だな、と思ったのは、外資とかでよくやるとされるロックアウト解雇(いきなり呼びつけて、クビにする、呼びつけた瞬間からネットへのアクセスとかをできないようにする)への対応として、普段から手元(ロックアウトされてもアクセスできるように)記録を残しておけ、というアドバイス。もともと、ロックアウト解雇とかが機密保持とかを念頭においているわけだけど、それが却って、機密保持のリスクを相対的に高くするような行動につながりかねない、というところ。でも、これも使用者側の視点だからそう思うのであって、従業員側として考えると、それ以外に手がないのも事実だと思うので、その辺適当な落とし所がないのか、という気がしないでもない(思いつかないけど)。

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