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ウィーン売買条約と国際取引契約実務

CISGに関して、用事があることもあって、Pace LawのCISGのデータベースにある論文をちょっとだけ読んだりしていたけど、あのデータベースはCISG推奨派なんだろうから、何となく、ではあるけど、CISG寄りという感じがしていた。それとは別に読んでいる日本語の文献からもそういうバイアスのようなものを感じなくもない。

そういうのを読んでいると、ニュートラルな立場の英米人からはどう見えるんだろう、ということが気になってくるのだが、そういう中で、この論文を見つけたので読んでみた。英文契約書作成のキーポイントとかでお馴染みの、元丸紅の中村先生が、英米の学者のCISGに対する評価を紹介するとともに、実務的に重要ないくつかの点について検討しているもの。


紹介されている数人の英米人によるCISG評価を、眺めてみると、条約ができた当初よりは、ポジティブに評価できる部分を評価しているということは言えるけど、総じてあまりポジティブではない。個人的にも、CISGは、部分部分でなるほど、と思うところがないでもないけど、総合評価としては使いやすくはないよな、という印象で、その印象と大きく乖離している感じがせず、僭越ながらも、やっぱりね、という感じがした。

否定的なコメントで個人的な印象に合致したのは、「それひとつで売買契約のすべての面をカバーできる法体系ではないので、ある国の法を準拠法として指定する必要が出てくる」というコメント。そうなると、結局、特定の契約の特定の条項が訴訟等においてどのように解釈されるのか、契約文言だけで考えた場合、それにCISGの文言で適用されるものを加味した場合、さらに準拠法も加味した場合、と分けて考えていくということになり、手間がかかって、使い勝手がよくないというのは、強く同意する。準拠法に行く前にユニドロワ原則も参照するようにすると更に面倒くささが増す。実務的にはそんなことをするくらいなら、CISGを排除することになると中村教授は指摘しているが、その通りだと思う。さらに、中村教授ご自身のコメントとして、「日本における判例の欠如」が挙げられている点も個人的な印象に合致する。

ここ数ヶ月の諸々の事態との関係で興味深いのが不可抗力条項(CISG79条)に関する中村教授ご自身の次のコメント。
「結論から言うと79条の基本的な考え方は色々な意味で実務感覚に合わない。その理由は大抵の不可抗力事由というものは、発生したときにはその後どう展開するのか分からないのだから、契約書には「水入り」にして対応策を考えるとしか書きようがないものだからである。契約不履行をした当事者は損害賠償義務は負わないが、契約は解除されうるというのは、いかにも中途半端な解決である。普通は契約を全面的に、または影響を受けた範囲内で停止し、相手方は権利の行使はできないなどとして、その後の展開によって臨機応変に対応しようとするものである。いずれにしてもこのような事態の対応策として、当事者は不可抗力条項の名の下に、様々な工夫をして自らの立場を守ろうとするのが実務である。」
震災および原発という一連の事態の下での企業の行動様式を見ていると(BLJの震災特集の記事などに伺われるように)、確かに「水入り」にして、応急措置を講じ、そこから柔軟に対応策を考えたのではないかと思う。思い返せばというか、今だってそうだけど、原発がどうなるかなんて正味のところ、まだ読みきれないのではないか。こういう事態を今まで契約実務で想定できていたかというと怪しいもので、想定できない事態について、無闇に規定をおくよりも、その場での臨機応変な対応ができるような余地を確保すべきなのだろう。

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