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契約締結上の過失に関する判例を読んでみた。

めずらしく日本の判例を読んで見たということで。感想とかをメモ。twitterで呟かれていたのを見て読む気になったもの。

平成20(受)1940 損害賠償請求事件(pdf)

要旨は次のとおりとされている。

 契約の一方当事者は,契約締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,契約締結の可否に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合であっても,相手方が契約締結により被った損害につき債務不履行責任を負わない



事案としては、信用協同組合が、財務状態が悪く債務超過状態にあることを説明しないまま、出資させた挙句破綻し、出資に係る持分の払い戻しができなくなったため、出資者側が、訴えを起こしたというもの。問題は法的な構成。
主位的に、不法行為による損害賠償請求権又は出資契約の詐欺取消し若しくは錯誤無効を理由とする不当利得返還請求権とし、予備的に、出資契約上の債務不履行による損害賠償請求権としたもの。主位的請求は原審で棄却され、不服申立の対象になっていないので、予備的請求の当否が争われる形になった。
原審は、問題の説明義務違反は不法行為または債務不履行の双方を構成する、としたのに対し、最高裁は、説明義務違反は債務不履行は構成しないとした。理由は、説明義務を果たさなかった結果として当該出資契約が成立した以上、問題の説明義務違反が当該出資契約に付随する義務の違反ということにはなり得ない、ということ。結局、問題の説明義務違反は不法行為ということになる。

 契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。
 なぜなら、上記のように、一方当事者が信義則上の説明義務に違反したために、相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り、損害を被った場合には、後に締結された契約は、上記説明義務の違反によって生じた結果と位置づけられるのであって、上記説明義務をもって上記契約に基づいて生じた義務であるということは、それを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず、一種の背理であるといわざるを得ないからである。契約締結の準備段階においても、信義則が当事者間の法律関係を規律し、信義則上の義務が発生するからといって、その義務が当然にその後に締結された契約に基づくものであるということにならないことはいうまでもない。



契約締結上の過失について、どのように理解したら良いのか、という一端が示されているような気がした。弁護士さんかどなたかが、司法試験受験生は必読というコメントをされていたのも頷けるところ。

また、町村先生の解説を見ると、本件では、不法行為の時効にはひっかかるので、債務不履行を認めることで原告を救おうとしたけど、最高裁はこれを容れなかったということらしい。

しかしながら、債務不履行と不法行為とで時効に差があって、しかも不法行為の方が期間が短いというのは、こういう事案のときには問題ではないのだろうか。この点については、上記の引用部分の後で、

消滅時効の制度趣旨や同条(dtk注:民法724条)前段の起算点の定めに鑑みると、このことにより被害者の権利救済が不当に妨げられることにはならないものというべきである。


というのだが、正直そうなのだろうか、という疑問が残った。

今回のような出資詐欺みたいな事案で、出資が最終的に戻ってこなかったとしても、契約締結過程において、リスクについて説明しないという詐欺的行為を経て契約締結に至った場合と、リスクを説明したうえで契約を締結した後の履行過程で、詐欺的行為があった場合とを比べたときに、後者で債務不履行と構成された場合の方が前者よりも保護されるというのは何だか違和感が残るのだが、こちらの誤解なのだろうか…。

話はそれるが、勉強不足故のことだろうが、契約締結上の過失というと債務不履行という風に何となく思っていた。理由を考えると、単に書物などでとりあげるときに、不法行為のカテゴリーに入れられているのを見た覚えがなく、契約法との関連で取り上げられているのを見た覚えがあるからなんだろう。

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