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英文契約書を読むためのヒント...のようなもの(5)

例によって、過去のものは次のとおりです。
経緯(1)(2)(3)(4)

僕に対して何だかとっても麗しき誤解をしている(イイカゲンに誤解ってことに気づいてほしいのだが)hiroさんからのリクエストがあったのと、リクエスト内容が、確かに気になるよね、という内容だったので、一応ちょっとだけ考えたメモらしきものを。この企画のそもそもの目的からは外れるかもしれないけど、まあ、リクエストがあったということで…。相当長めになってしまったうえに、ボケ倒している可能性も否定できない。その場合はこっそり教えていただけると助かります(>識者)。




お題は準拠法と裁判管轄。というか、契約当事者以外の第三者を使っての強制的な紛争解決手段の決め方、ってところなんだろう。

とりあえず、エラソウな口をきくとすれば、準拠法とか裁判管轄を含む紛争解決手段とかは、それぞれ独立して考えてもあまり効率的ではなく、取引の実態の全体の中で考える必要があるような気がします。例えば、hiroさんの使った例えで考えると、日本の企業とインドの企業がインドで事業をしようというときに、この両者の間の契約の準拠法を仮に日本法で、日本の裁判所で訴訟により解決するということに合意したとして、それは果たして実務的に機能するのだろうか?と疑問に思う。

事業についての資料の多くはインドにあって、英語か、さもなくば、現地語で書かれているかもしれない。それを持って来るのも大変だし、日本の裁判所は英語を読まないのが原則だから日本語の翻訳で出す必要があって、手間もかかる。また、証人となるべき人は、インドにいて、日本につれてくるのも手間だけど、それを抜いても、日本人以外は日本語は解さないかもしれないから通訳が必要ということになるだろう。事業の内容によってはインドでの法規制があるかもしれないが、日本の裁判所はそういう規制について知らないから、そういうものについては説明が必要。英語の資料に基づき、日本語で資料を作って出す必要がある。規制内容について専門家に証言してもらう必要があっても、日本語を解さないなら通訳をつける必要があるということも考えられる…とまあ、そんなこんなを考えると日本での訴訟は費用倒れになりかねないのではないかという気がしてくる。そんなことをするくらいだったら、日本まで話を持ってこないで、間にある、どこか適当な場所で解決、ということはできないのだろうか、という気もする。

さらに、仮に、日本で訴訟をして、勝ったとしても、相手先の資産に対して執行をかけるとなったときに、日本以外の国にある資産に対しての場合は、日本の裁判所における確定判決がストレートに執行可能かどうかは疑問が残る。特にインドにある資産に対しての執行となると、相手方が管轄合意が無効であるという議論をもう一度持ち出すことは予想しやすい(管轄合意に関するハーグ条約(2005)があるけど、締結状況とか、どれくらい機能しているか正直知らないので、ここでの考慮からは外します。すいません。)。先の例で考えると、取引実態などからして、インド側当事者にとって著しく不利な管轄合意ということで否定されるリスクもあるだろう。

また、訴訟を日本でするから問題ということで、日本法のまま、訴訟管轄だけインドという発想も一応不可能ではない。インドの裁判官に日本法を理解してもらうというのは、相当難しいというか、一から説明する手間がかかるし、説明を尽くしても、説明を無視されて、結局インド法に基づいて判断される可能性も否定しにくいと思うし、仮に、実体法については日本法で判断となったとしても、「手続きは法廷地の法で」というのが国際私法上の原則があるので、適用される実体法と手続法との間で不整合が生じるリスクがある。

もう一つ。契約内容によっては、日本法での取り扱いがはっきりしておらず、却ってリスクが生じるかもしれないという議論もあり得る。この点は前に紹介した 「ゼロからわかる契約書のつくり方 (PHPビジネス新書) 」/原秋彦、に指摘があった。例えば、ライセンス契約のような非典型契約の場合、日本法を準拠法とするといっても、法律上特に明文の定めがあるわけではないので、どこまで予測可能性があるかというとよく分からない。原先生は上記の本の中では、準拠法に拘泥するよりも、紛争解決に向けた具体的なルールをきちんと決めておくことが重要と述べている(と理解したのだが)。

こういう話で思い出すのが、以前の職場で渉外ものの債権回収案件に際して、債権回収の経験豊富な経理畑の先輩から言われた「執行から逆算せよ」という言葉。執行するとしたら、何に対してか、その対象物に対して執行が容易にできるのはどういうルートかということ。債権回収で言えば、換金可能性の高い資産がどこにあって、それに執行をかけるなら、どういう手段で債務名義を取るか、というような発想。

結局のところ、国境をまたぐ可能性のある取引については、法令上強制されているなどの特段の事情がない限りは、個人的には、紛争処理手段は、仲裁で、ということをまず考えます。仲裁判断の執行に関するニューヨーク条約があって、留保つきも含めて、相当数の国で使えそうなので。ただし、当該国で執行法制が十分機能しているかどうかは、別の問題として考える必要があるかもしれません(その辺は事案の重要度などに応じて現地の弁護士に確認するべきでしょう)。そのうえで、仲裁が盛んに行われている先進国(シンガポール、NY、ロンドンとか)での仲裁としたうえで、準拠法については、別途強制されないのであれば、仲裁地の国の法律を指定することを考えます。アジアであればシンガポールでしょうか。

先のインドとの取引事例であれば、英米法系のシンガポール法が準拠法で、シンガポールで仲裁(仲裁の場合は仲裁規則も指定が必要ですが、ICCルールかSIACルールでしょうか…このあたりはどちらが良いのか分かっていませんが、ICCルールでやると費用が高いという話は聞いたことがあります。)となれば、相手も受け入れやすいと考えます。地理的にも適当そうな気がします。
(仲裁に関しては、仲裁人の選び方とか色々問題はあるはずだけど、これ以上は勉強不足なので、今は無理ってことで…)

(上記のアイデアの場合、自社側の方がそれで良いのか、という問題は残りますが、シンガポールの場合は、ジャパンデスクのある現地事務所や、日本人でイギリス系の資格を持った方のいる事務所(あえてリンクはしませんが)とかもあるので、それなりに対応可能かも…という気がします)

・・・取り止めがなくなりましたが、こんな感じでいいんでしょうか>hiroさん

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Re: ありがとうございます

hiroさんどうもです。
僕が書いたのがどこまでマトモなコメントになっているかは、正直疑問があるので、まあ、そういう考え方もあるんだ程度に見てもらったほうが安全かと。

そんな程度なんで、大先生とかいうのはカンベンしてくださいな。

それでは、また。

ありがとうございます

dtk さん、こんにちは。
私のリクエストに応えてくださりありがとうございます。

いやはや、たいへん勉強になりました。
こちらから訴訟を提起する場合だけでなく、相手方が訴訟を提起してくる可能性を考えると、実効性は別として契約書上「ホーム」に持ち込んでおいて、「面倒くせ」と思わせるのもありだよな、と過去の数少ない経験からは考えていました。
この辺りについてはまた少し書いてみたいと思います。
それにしても、ありがとうございました。やはりdtkさんはこの分野の大先生ですわ…。

追記

@takujihashizumeさんがtwitterで次のようにコメントされてます。
契約の準拠法、当事者国の法律でまとまらない場合はNY州法にしておけばと安易に考えていたが、契約の内容がNY州に関係ない場合、25万米ドル以上の契約でないと準拠法にできないと当のNY州法に書いてある罠。 http://bit.ly/eDFtXo

確かに、そうでした。準拠法について合意しても、現地の法規上それが認められるかどうかは、別途確認が必要でしたね。すいません。

http://public.leginfo.state.ny.us/LAWSSEAF.cgi?QUERYTYPE=LAWS+&QUERYDATA=$$GOB5-1401$$@TXGOB05-1401+&LIST=LAW+&BROWSER=BROWSER+&TOKEN=36322016+&TARGET=VIEW
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