御社の安全保障輸出管理は大丈夫ですか (平成22年完全施行「改正外為法」への実務対応マニュアル) /小林 正啓 (著), 樋口 禎志 (著, 監修), 塩田 靖浩ほか (著)
前にメモした、第一法規の輸出管理ナビで紹介されていた本。漸く一通り目を通したので感想をメモ。実務家さんと弁護士さんたちとの共著で、理論面と実務面と双方に目配りしているのが特徴。CISTECの本以外で、普通に書店で手に取れるこの分野の本は、他に2冊(これとこれ)くらいしかないけど、その2冊との比較で言うなら、輸出管理業務について最初に読むなら、この本なんだろうという気がする。この本との比較で言えば、前者は、きちんとした環境が整っている企業での事例で、そこまでの環境が整わない企業においてどこまで参考にしたら良いのか必ずしもはっきりしない気がしたし、後者は、企業の方の本でないこともあり、背景知識の説明とかはそれはそれで有意義だし、判例の話も有意義な割には、実務からの距離が遠い気がした。
第1編と第2編は法理論面からの記載で、弁護士さんたちが、基本的なところから、外為法に基づく輸出規制の法制度について、罰則まで含めて解説してくれているので、法務の人が読むには分かりやすいかもしれない。一方で法律系に縁遠い人にとっては読み易くないので、後回しで第3編より後ろから読んで、その後で読んだ方が良いのかもしれない。外為法の体系図をはじめとする、図表類が上手く出来ているところが、個人的には、印象深い。第3編は、逆に実務家の方が、取引の引き合いが来た時点から、実際に輸出するまでの流れのそれぞれの時点で、何に留意し、何をしなければならないか、手続書類の記載事項にいたるまで一通り説明してくれている。取引の全体像を把握したうえで、その中で何をしないといけないのか、が分り易い。
値段がやや高めなのは、正直それほど部数が出る本ではないと考えられるところからすれば、やむを得ないのだろうが、それを別にして、「こうしたほうがいいのにな」と思ったところをいくつか、ついでにメモ。
- 重要な関係法令については、末尾に載せておいても良かったのではないか。ネットで探せるかもしれないが、探しやすいとまでは言えないので、初心者向けには、重要度の高そうなものについては、一緒に載っていると親切だろう。
- 違反事例、判例についてももっと具体的な事例に言及があっても良かったのではないか。意識高揚をはかるうえでは、実際に輸出管理で失敗して、お咎めを受けた他社事例があったほうが、担当者以外の理解は得やすいのではないか。