スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

企業と研究者のための職務発明ハンドブック /永野 周志



職務発明に関する相談があり、相談内容自体は、職務発明制度とはあまり関係ないが、ついでなので読んでみた。正直、僕には難しかったので、どこまで理解できたか謎だけど、一応メモ。

amazonで「職務発明」と入れて出てくる本の中では、現時点では最新の本。2008年までの裁判例を丹念に調べて、分析してくれている。特に、直近の40件については巻末に一覧表になっていて、これも便利そう。その内容を踏まえて、問題になりそうな論点について、個別に検討している。裁判例において、個々の論点がどのように解釈されているか、という点への説明に力点が置かれているはずなのに、裁判例の当否についての著者の見解が随所に出てきている。検討結果について見解を異にする場合であっても、ここで取り上げられている各論点について、検討するうえでは、参考になると思われる。





それはさておき、この本の記述というよりも、著者の解釈に基づく裁判例・判例の考え方について、いくつか気になったところを以下メモ(これが書きたかったのだが)。
  • 企業内(正確には組織内という表現が適切か)発明者が、リスクを取っていないから、発明の独占の利益はすべて、発明者に変わってリスクを取った企業側が享受すべき、というのは、読んでいて最初に違和感を覚えたところ。確かに、プロ野球選手に比べればリスクは小さいかもしれないが、研究の成果によって、昇進が左右されたり、自分の研究に対する予算配分が異なってくる、というようなところを、リスクがない、と評価して良いのだろうか。ましてや、企業自体が潰れるかもしれないとか、企業で働くことで、他で通用しないスキルばかり身について、「つぶしの効かない」状況になってしまうことが、リスクではないと評価してよいのだろうか。そういう意味で企業勤務にリスクがないというのは、一昔以上前のモノの見方でしかないのではないだろうか。
  • また、企業が生き残るためには、職務発明に対する「相当の代価」について、低く抑える方向で解釈されているということだが、それで良いのか、というと疑問に思った。コストについての意識だけでそのように考えているのだろうけれど、研究者のリクルーティングとかの手段として、他社と比較して魅力的な水準での報酬支払いを約束するという発想があってもおかしくないのではないかと思う。
いずれも、この本が対象としていない政策論に属することだが、政策的な発想も職務発明規程を策定する際には必要なはず。その意味では、この辺りについても、もう少し突っ込んだ記載があっても良かったのではないか、という気がした。

コメントの投稿

非公開コメント

アメリカの方が素直なのは同感です

JUNさん、いつもどうもです。
確かにアメリカの発想の方が処理としては素直な気がします。ただ、それが現状の日本でどこまで機能するのか、僕にはよくわかりません。うかつに外国の制度を導入して破綻寸前ってのは、どっかで聞いたことがあるような話なので、その二の舞?になってほしくないと思います。

それでは。

ご無沙汰しております

この問題とは、知財にいた頃からの古い付き合いですが(笑)

私の意見は、こちらに書いたことがありますが
http://genbahoumu.seesaa.net/article/28341080.html

私もsenri4000さんと同じような意見ですね。
アメリカのような考え方がすっきりします。

先日の日立の事件でも、双方控訴ということになりそうだということですが、当事者の不満は当然の結果というか、今の日本のやり方で企業・発明者双方の満足度を高めようとすると、ドイツのように泥沼にはまりそうな気もします。

リスクのお話ですが、そういうことを経団連あたりから言われると胡散臭いと感じられてしまうのかもしれませんが(笑)、私は企業内研究者とプロスポーツ選手を比較することに違和感がありますね。

研究者にだけ、労働三法や通常の解雇要件が適用されないということであれば、挙げられているようなリスクを特許法で加味する意味もあると思うのですが。

確かに労務問題になってますね。

senri4000さん、いつもどうもです。
確かに企業の研究者の取る最大のリスクは勤務先の選択ですよね。企業の中での研究テーマの選択とかにもリスクはあるでしょうが、それは大学とかでもあるのでしょうし。

勤務に関するリスクは、報償でカバーする話かと言うと、確かに、疑問が残ります。

アメリカとの比較では、アメリカ式の処理の方が素直なんだろうと思うのですが、それはひとつにはアメリカの方が報酬設定の自由度が色んな意味で高いことに起因というか、終身雇用を前提にして、給与の上がり方のパターンに多様なものを認めない日本型の報酬設定の形の問題なのかもしれない…と思ったりします。

ともあれ、結果的には、ご指摘のように、職務発明が労務関係の不満をぶつける手段になっているようで、何だか変な感じですよね。立法論で何とかするべき話ですよね。どうしたらいいのか個人的にはさっぱり分かりませんが。

労働問題の様相が

こんばんは。本書は読んでいないのですが、職務発明の相当の対価とリスクテイクの話。

発明者が取っているリスクというのは、発明をすることについてのリスクではなくて、その企業に勤務することについてのリスクですよね。それは、職務発明の対価で取り扱うのではなくて、研究者の報酬(給与とか賞与とか)の中で扱うべきなのではという議論になるべきではという話につながるのだと思います。

アメリカでは、発明することも含めて研究者の仕事であり、それに対する報酬が支払われ、相当の対価という発想はありません(hire to invent)。そちらの方が素直な形ではないのかという気がするわけです。

職務発明訴訟も、待遇に不満をおぼえた研究者が会社に対してそれをぶつけるの手段として使っている構図があり、すっかり労働問題の一部になってしまっています。

35条がある以上はどうしようもないのですが、企業としては、そこのリスクを下げるために色々手を打つ形にならざるを得ません。

この問題はさわり出すと根深くて結論がなかなか出ないんですけどね。立法論になってしまいます。
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

dtk

Author:dtk

日本にある企業の法務部署で働いています。
*コメント等で私に言及するときは
"dtk"でお願いいたします。

旧ブログ

ITエンジニアのための契約入門 iPod touch/iPhone用にリリースされました。詳しくはiTunesAppStoreから入手可能

初めてコメントいただく際には「このblogについて」もご覧いただければ幸いです。

カビバラさん時計
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

twitter
    follow me on Twitter
    カウンター
    Amazon.co.jp

    ブログ内検索
    RSSフィード
    リンク
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。