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Upjohn Co. v. United States, 449 US 383

たまには判例でも読むかということで…アメリカの判例ですが。長くないから読めるだろうと思ったというのもある。その割に、エントリが無闇に長く、upするまでに時間もかかって、何だかなあ、って内容になったけど、一応上げておく。

ネタにしたのは、企業内弁護士もattorney-client privilegeの適用を主張出来るという点につき、アメリカで議論する際には必ず出てくる連邦最高裁判例。結論としてはin houseでもattorney-client privilegeは主張可能ということになり、原則手持ち情報はすべて開示というDiscovery手続においてもattorny-clientのコニュニケーションについては、開示せずに済むということになる。
なお、以下は連邦法下での話なので、州法下は話が変わってくる可能性があることに注意。

Upjohn Co. v. United States, 449 US 383 - Supreme Court 1981
原文へのアクセスのため、findlaw で掲載している部分へのlinkをはっておく。こちらには冒頭にsummaryも付いている。本件は有名判例ということもあって、Wikipediaでもエントリがあるし、連邦最高裁での口頭弁論のoral argument等も公開されている


1.事案の概要

製薬メーカーのUpjohnにおいて、複数の外国の子会社が現地政府との取引を確保する目的で当該政府に何らかの支払いを行っているということが(原審での記載を見ると136カ国で総額US$4.4milということらしい)、海外子会社の1社に対する会計監査で判明したところから話が始まっている。会計監査人は、同社の General Counsel(General Counselを20年以上務めている)であるVice President(NYとミシガンで弁護士登録)にその旨を伝え、General Counselは外部弁護士とBoardのChiarmanに相談をし、「疑わしい支払い」に関する内部調査が始まった。

調査内容としては、外国のGM およびエリアマネージャーに対して、Chairman名で質問状を送った。その中では、既に判明している「疑わしい支払い」があり、経営陣は同種の支払いについてfull informationを必要としたうえで、General Counselにも相談のうえで、本体および子会社による外国政府または政府職員への支払いについて、その性質と重要性を見極めるための調査を行うとして、該当する支払いについての詳細な情報提供を求めている。その際に、当該調査は"Highly Confidential"扱いとして、調査目的で情報を得るうえで有用な従業員以外に口外しないよう指示が出され、調査はGeneral Counsel宛に直に返信することとされていた。並行してGeneral Counselと外部弁護士は調査対象およびその他の従業員へのインタビューも実施した。

その後当該支払いに関し、同社はSECとIRSにpreliminary report (Form 8-K)を自主的に提出した。提出を受けたIRSは税務面での調査を開始した。原審の記載からするとリニエンシー狙いで、問題がありそうなところについてのみ(原審での記載では4.4mil分のうち、0.7mil分)詳細な資料を提出し、問題のなさそうなところは詳しい資料を出さなかったところ、後者の部分について、IRSから資料提出を求められた。同社は、このうちの一部の提出につき、attorney-client privilegeとwork productを理由に提出を拒否。拒否された分についてIRSが提出を強制するsummonの申し立てを連邦地裁@ミシガン州に行った。

2.審理経過
IRSの申立を受けた連邦地裁は、Magistrateのrecommendationに基づき、同社側の主張を否定した。詳細は不明だが、Attorney-Client PrivilegeについてはWaiver(特権の放棄)を、Work Productについては、適用を認めつつも、保護する必要性以上に開示する必要があるとして開示を認めた模様。

これを受けて、同社側が6th Circuitに控訴した(これが原審ということになる)。

原審では、attorney-client privilegeの適用範囲に関して、いわゆるsubject matter testではprivilegeが広がりすぎるとして、control group testを採用した。そのうえで、会社の上層部と弁護士とのコミュニケーションについてはattorney-client privilegeが適用されるので、その範囲を再度吟味するようにということでremandした。
(なお、work productであるとの主張については、原審では本文に記載がなく、脚注で、administrative summonにはwork productの適用がなく、summonが適法になされている以上は、Upjohnの主張には根拠がないとしている)

これに対してUpjohn側が上告した。

3.ここでの争点
(1)attorney-client privilegeは、企業においてどこまでの範囲で適用されるか
(2)work productはtax summonに適用されるか

4.結論
(1)については、Upjohnの従業員が弁護士と行ったcommunicationはattorney client privilegeの適用を受け、開示を強制されない。
(2)については、適用有りとした(この点については、政府側が適用ありということは認めたため、争いはなかった)が、そのうえで、保護の必要性以上に、開示をする必要があるということが十分に示されているかどうかを再度審理するようremandした。

5.最高裁の論理
(1)Control Group TestとSubject Matter Test
attorneyとclientが十分且つ率直なコミュニケーションを行うことを促し、法の遵守と公正という公益に資することを目的として認められるのがattorney-client privilegeで、強制開示の例外として認められるprivilegeのうちの一つ。今回、争いになっているのは、"client"の範囲。企業がclientの場合でもこのprivilegeが適用されることは別の判例(236. U.S. 318)で明らかにされているし、本件でも争われてはいないが、問題は、企業の中で誰をclientとして認識するかということ。企業といっても、実際は誰か自然人が企業に代わってattorneyに相談することになるので、その「誰か」の範囲はどこまでか、ということが争点になっている。社長とか代表取締役が相談にいけばprivilegeの対象になるのは当然としても、新入社員とか仮に相談に行ったとしてもprivielgeを認めて良いのか、ということ。そこまで認めると強制範囲の対象から除外される範囲が広くなりすぎないかという懸念とのバランスが問題になる。

この点については、Control Group TestとSubject Matter Testという二つの考え方がある。

前者は、ポジションの有無を問わず、相談対象の案件について実質的に会社の意思決定をコントロールしている人間をclientとして認識するという考え方。後者は、従業員が職務の範囲内で、上職者の指示の下で、法的アドバイスを求めて行うcommunicationで守秘が保たれているものについては、当該従業員もclientの範囲に含めるという考え方。

ここでは、原審での前者の考え方を採用せず、後者の考え方を取っていると考えられている。

後者を取った理由は、法的なアドバイスをきちんとするために必要な情報を持っているのは、control groupに入らないであろう下の人々だから、彼らとのコミュニケーションがprivilegeの対象にならないのは、clientとattorneyが十分にコミュニケーションを取って、それにより十分なアドバイスを受けられるようにするというそもそものこのprivilegeの趣旨を没却させることになる、ということと、control group testは判断基準がわかりにくく、裁判例もまちまちであることから、予測可能性も立たないという点が問題とされたことによる。

一方で、control group testを採用する理由であった、privilegeが適用される範囲が広がることへの懸念に対しては、当の従業員に相談内容の前提となる事実については訊くことが可能としている(だから問題はないという趣旨だろう)。さらに、Discoveryにおいて、相手方が検討した内容を開示させて、それにタダ乗りすることを認めているわけではない、としている。

これらの点については、Burger裁判官(Chief Justiceだけど)が、予測可能性を増やすために、一般化したルールとして示すべきではないかと補足意見で述べているが、あくまでもケースバイケースで判断するべきとしている。

(2)Work Productの扱い。
論点のもう片方はWork Product。こちらはClientまたはその代理人(attorney含む)が訴訟に向けて準備した資料をDiscoveryの対象外とするもの。Attorney-Client privilegeと重なる部分もあるけれど、重ならない部分もある。今回のケースではUpjohnのGeneral Counselのインタビュー時に取ったメモとかで、Attorney-client privilegeの対象にならないものが対象になっている。メモについても、作成者の思考過程とかが反映されてしまうため、Discoveryでの開示対象になってしまうと、訴訟準備もうまくできなくなるということから、保護対象になる。

IRSのSummonに基づく開示要求に対しても、Work Productを適用する余地があることは既に判例がある。

一方でWork Productがで起用されても、開示の必要性があり、他の方法での同等の情報の入手が困難な場合は、保護されないとされている(FRCP26(b)(3))。となると、この例外が適用されるのかどうか、ということになるが、この点について、District CourtでのMagistrateは、開示の必要性と、同等の情報をundue hardshipなく入手することが困難であることを示せば十分というところを基準に考えたのに対し、Attorneyの思考過程などが反映されたメモなどに対しては保護の必要性が高いことがFRCP Rule 26においても認められているとして、必要性と他の方法での情報入手の困難さをより強く示さなければならないと判示した。そのうえで、これらの点については、再度審理しなおすべしとしてremandした。

6.感想
Work Productについては、結局どうなったら例外を満たしたことになるのか、この判示では分からない。
一方でAttorney-client privilegeについては、原審の判決を読んだ時に、この判旨では、会社側で誰が相談するかでprivilegeの適用の有無が変わりかねず、予測可能性が立たず、困ったことになるだろうと思ったら、そのとおりの指摘があったこともあり、個人的にはなるほどという感じがした。

...長くなった割にまとまりがなくてすみません。

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