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実践 契約書チェックマニュアル/飛翔法律事務所 (編集)



法務関係の書籍の目利きとしても優れているtacさんが、blog(企業法務マンサバイバル)で取り上げていたのを見て購入。

確かに良い本。特に初めて契約書のレビューとかをする人にとっては手元においておいて損のない一冊。その一方で、ある程度経験のある人にとっても、それなりに参考になるところがあるのではないかとも思う。前のエントリに書いたけど、今後、未経験の方に契約書のレビューをお願いすることになるので、参考書として渡してみても良いかもしれないと思っている。

売買契約書について、ひとつの契約書を50項目に分解して、それぞれについて、たたき台の例を示して、買主視点からの修正例、売主視点からの修正例、チェックポイント、解説、さらに進んだ応用例、という具合に記載されていて、それぞれについて丁寧に解説されている。tacさんが既に指摘しているように、解説の中で「相場観」(これが何を意味しているのかは、訊かれると難しいけど、自社側に不利な原案に対しては、せめてこの辺りまでは押し戻して欲しいとというところ、自社側に有利なドラフトについては、この辺りまでは妥協することもあり得る、という感覚、というところだろうか)を示している点は、目新しいと僕も思う。これらの解説に180ページ近く(全体で約250ページのうち)を使っていて、項目として、売買契約でありそうな項目はほぼ拾い尽しているのではないかと思える。

記載されている「相場観」や修正例と合わせると、この本を使えば、売買契約については、売買対象の製品や自社と相手方との関係などの知識に基づき、初心者でもそれなりになんとか契約書のレビューが出来るようになるのではないだろうかと思われる。


とは言うものの、気になる点もあった。

  • 末尾のリーガルレビューの実例は、正直、これだけ読んでも理解しにくいのではないだろうか。その前の部分では売買契約について丁寧に説明しているのだが、ここでいきなり売買以外の契約について、先方案へのレビューの実例を示している。ただ、それぞれの契約(秘密保持契約、コンサルティング業務委託契約等)について、それぞれがどういう契約なのか、説明があった方が良いと思う。どちらの側に立ってレビューしているかは説明があり、その立場からすれば、どう対応すべきかのコメントはあるが、逆の立場から見たらどうなるかについてコメントがなく、前の売買契約ほど丁寧ではないので、何だか中途半端な気がした。寧ろ売買契約に特化して、模擬的な交渉の経緯を丁寧に全部追いかけてみても良いのではないか。ドラフトが何往復かして、最終案にいたるまでの過程を説明する形の方が有用さの度合いが高いのではないかと思う。
  • 契約が思いっきり純ドメしか想定していないが、それでいいのかと言う気がする。海外に売るケースで日本語の契約書を交わすケースがどれくらいあるかというと、日本企業の海外現地法人と交わすケースくらいしかないかもしれないが、想定していないのも、どうかなあ、という気がした。想定するとおそらく紛争解決手段として仲裁を選ぶケースも視野に入ってこないといけなくなるはず(もちろん日本国内でも仲裁を使うケースはあり得るだろうが…)。
  • 売買契約の解説の中で<チェックポイント>として書かれているポイントは確かに重要な点なのだが、契約条文について、売主視点、買主視点からみて、こう修正する、という形になっているのだから、それと歩調を合わせて、売主にとって重要なのか、買主にとって重要なのか、分かるように書いてもらった方が、さらに理解しやすくなるのではないかと思う。
  • 中心となる売買契約の解説についても、個人的には「?」と思う項目もあった。例えば、秘密保持のところで秘密情報漏洩などの際の損害賠償額を定めておく話が出ているが、金銭の支払いで解決するというよりも、漏洩に対して仮処分などで情報漏洩時の被害拡大を食い止める手段とかを規定しておくべきなのではないかという気がした。また、契約書のバックデートのケースでは、権限者の人事異動が生じることにより、契約締結日として記入した日には記名押印した人が当該立場にいなかった(要は、実際に締結した日に権限を有していた人の名前で締結したものの、バックデートしたら、バックデートした日付にはその人はそのポジションにいなかった)とか、決算期をまたいでバックデートしようとすると決算とつじつまがあわなくなるとか、そういう問題があることを触れるべきではなかったかと感じたのだった。ついでに言うと、契約締結日は、後から契約内容を変更する書面を作る際に、締結日、当事者名、および、書類のタイトル、で変更対象の書類を特定することが通常だと思うので、その意味でも空白にすべきではないと指摘したほうがよかったように思う。
...とまあ、書いては見たものの、総合的に見て、有用な一冊であることは間違いないように思う。契約法務初心者には、よくある売買契約についての参考書として(それ以外の契約においても参考になるところもある)、初心者ではない方々にとっても、自分のチェックポイントに抜け・漏れがないか書確認する手段として、使うことができるから。

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