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CISGのセミナーにて

ネタにするのを忘れていたが、先日CISGに関するセミナーに出た。講師のお二方は、どちらも企業の法務部からアカデミックに転じられた方々。価格が5000円と非常にお手ごろだったのだが、有意義だった。

セミナーの内容としては、全体像をごく簡単に説明した上で、CISGに基づく、国際売買契約の不履行と救済方法についての説明という形であり、この条約からすればどういうドラフティングをすべきか、という売買契約の実例も見ながら説明がなされた。

ちなみに、このセミナーが上記のような金額で安価だったのは、実は、LexisNexisからCISGを踏まえたドラフティングの本が発刊予定で、その宣伝を兼ねるという目的だったらしい...らしいというのは、当の本が当日に間に合わなかったからで(上記の実例はその本からの抜粋)、ついでにいうと判例についてまとめた本も続刊予定とのことであった。 LexixNexisのサイトを見ても、新刊予定がupdateされていないので、この辺りについては情報がなかった。せっかくの話なんだからきちんと updateしておけばいいのに、と思うのだが。
あちこちで言われていることではあるが、CISGは使い方に気をつければ、それなりに使い道があるということは分かった。ただ、ややこしいので、自分が(自社が)使いこなせるかどうか、見極めも必要かと思う。一例を挙げれば、買主の契約解除権に関する規定(以下NBL912号での記事から引用)

イ.買主が契約を解除(avoid the contract)できるのは、次である
(a)売主に基本的な違反(fundermental breach)があるか(49条(1) (a))、または、
(b)期日に引渡しがなく(それが基本的な違反といえないまま)、買主が付した新期日内に売主の引渡しがない(49条(1) (b)、47条(1))。
ロ.しかし、上記(a)の間に新期日の設定があった場合は、その新期日内に売主が何らかの引渡しを行っていると、状況(買主の選択肢)が変化する。
(a)引渡しが、結局、期日後にズレていたというとき、買主は、そのズレを知ってから相当期間内に解除を表示しなければならず、
(b)売主が、不適合の是正をしないときも、要件ごとに、解除表示しなければならない相当期間の開始時期が次のように区別されている。
(i)その不適合を知ってから、または知るべきであったときから(49条(2)(b)(i))、
(ii)「買主が付した新期日内の履行をしない....」と売主がいうとき(49条(2)(b)(ii))、
(iii)買主ではなく、売主が付した新期日内に(48条)、(x)売主がその不適合の是正をしないか、(y)買主が売主の申出を受け入れなかったときから(49条(2)(b)(iii))



結局いつ解除できるのか分かりにくいし、構造が分かりにくいだけではなく、「相当期間」等判断を要するところもあって、正直使いこなすのは大変ではないかと思う。むしろ一旦全部opt outしたうえで、都合のいいところは個別に契約書の文言に入れてしまう方が、使い勝手が良いのではないかと思うのである。

もうひとつ。この条約、直接に国内法になる、自力執行力のあるもので、かつ、日本語は外務省の訳文はあるものの、これは参考訳であり、実際に訴訟になったときにこれにも基づくことはできず、公式版がある中では、英語版に拠ることになると考えられる点が面白いというか、興味深いというか。

CISGに基づく訴訟が日本の裁判所に持ち込まれると、裁判所は直に英語を読んで判断をすることになるわけだ。自力執行力のある条約は、人権条約に関する条約の中にはすでにあったようなので、この条約に始まったわけではないが、民事訴訟に適用されるような条約としては、初めてのものなのではないかと思う。そうなると、日本の裁判所が公式に英語を読んで考えないといけない事態が生じるわけだ。日本の裁判官が英語がどの程度読めるのか(何だか偉そうだが)よく分からないから(条文自体については、外務省の訳文を読むのだろうけど)、判断がどうなるか、そこにリスクがあるとも言えなくもない。

その意味で、CISGがAttorney@Penn lawさんが言う「英語専門部」を作るきっかけになったり…しないかな?とちょっと思ったりする。


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使いこなすのは難しそうです。

臥竜窟さん、こんばんは。
こちらの会社では、深刻な問題意識が希薄ですが、使いこなすのは無理そうなのと、ちょうど自社が売り手の標準契約の見直しをするので、その際に一括してopt outしてしまう方向で片付けるつもりです。使いこなせずにやけどをするのは避けたいので…と言っているといつまで経ってもできるようにならないのでしょうが…。
用語の解釈の問題については、判例の蓄積でカバーするという発想でしょう。事実、それなりに判例は海外で蓄積されていますし、web上でも見ることができるようです(見たことがまだありませんが)。それを日本の裁判所にどうやって示すか、も次の論点になるものと思いますが…。

CISGについて

CISGについては、私の会社でも対応をできるように勉強をしている段階であり、機が熟するまで(うまく使いこなせるようになるまで)は、契約上その適用をしないことを明記している状態です。

そもそも、"materia breach"という英米法上の文言と、"fundermental breach"はどのように異なるのか等、文言の定義自体いまいち不明確な気がいたします。

もちろん、条約ということですから、英米法に偏った文言を使用していると見られてしまうリスクを避けたのでしょうが、その結果予測可能性が弱まってしまってはCISGにとっても良いことではないでしょう。

今のところ、弁護士の先生もCISGを考慮したうえでドラフティングができる方というのはそうそう多くはないと思いますので、おそらく多くのリーガルアドヴァイスにおいて、CISGの排除を勧められているのではないでしょうか。(ちなみに私の会社が依頼した案件では排除を勧められました。)
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