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「法人税が分かれば、会社のお金のすべてが分かる 」/奥村佳史



総務&法務担当の部屋で紹介されていたこともあり、成田の本屋で買って、ハワイ行きの飛行機の中で読了。

法人税がわかると会社のお金のすべてが分かる、というのは言い過ぎではないかと思うが、ともあれ、法人税について理解しておくのは企業で働く人、特に管理部門で働く人にとっても、「はじめに」に指摘されている通り、余計に法人税を払う結果に繋がる芽を積むことを容易にする意味でも有用ではないかと思う。その一方で、企業で働く、経理以外の部署の人々が法人税について何を知るべきか、という観点からこれくらいの分量でまとめてくれた本は、個人的にはあまり見たことがなかった。経理の人向けの本は相当見るけど。かなりラフかもしれないが、この分量である程度の鳥瞰をさせてくれるだけでもこの本は有用なのかもしれない。卑近な例から話を始めつつ、きちんと法人税の論点に話をつなげているあたりはさすが、というところか。

また、各章ごとにまとめがついている。一読したあとで内容を確認するためには、こちらを見ればほぼ十分という感じなのでこれも便利。

入門書というと、この先に行きたい人への次の一冊の紹介があると良いと思うが(入門書を読んだときは必ず、そういうことを書いているが)、さすがにここでは上げるのが難しいようなので、記載がないのはやむを得ないのだろう。
13章それぞれについて感想の類をば。

1章では、宗教法人への課税の話からはじめて、法人税が一定法人の一定の収益事業のみに課せられることを解説。あのラブホテル事件から話が始まるのがわかりやすい。

2章では、たくあんでの法人税の物納の可否についての話から法人税の課税標準の話へと話がつながっている。資金繰りと所得が一致しないこと、巷に出回っている「節税対策」の問題点(資金繰りを苦しくする)の指摘がされている。資金繰りと所得とが一致しないが故に、法人税支払いのために借入が必要になるというのは問題ではないかと言う指摘はなるほどと思った。

3章では、赤字企業でも法人税支払いがあるというケースから法人税の税額計算の基本的な考え方に話が及んでいる。「収益」と「益金」、「費用」と「損金」の差異の考え方の説明は面白いと思ったし、法人税と一言で言っても中身ととしては4つの税があって、わかりにくい点は改善すべきとのコメントは、そのとおりと思う。

4章では、貸し金庫を貸してくれるかどうか、から、繰越欠損金を使って、法人税の支払いを免れるケースの説明がなされている。繰越欠損金の制度には批判もあるだろうけど、僕自身は制度自体は悪だとは思わない。7年間という期間の長さが妥当かどうかは議論があろうと思うけど。

5章では、投資会社における、受取配当等に関する顧客への説明から、受取配当に関する課税の話になっているけど、確かに、投資か貸付か、という拠出形態の差異によって、全体としての課税額が大きく異なるというのは、実態にほとんど差異がないにも拘わらず生じているとなると、確かに疑問が残る。

6章では、冷凍食品の棚卸実査から、棚卸資産と売上原価の計算についての話に行っている。以前簿記を勉強したときに出てきた、先入先出方とか、移動平均法とかの話が税務上どういう形で影響をおよぼすのかについての説明が興味深かった。加えて、監査法人と税務署との関係についての記載も面白かった。

7章では、リゾート施設を買収したらどうなるか、という話を糸口に、減価償却費の扱いについて話が行っています。一棟の建物を買っても、一棟単位ではなく、部位・個別の設備ごとに減価償却というと、その手間が大変だというのはよくわかった。しかしながら、建物は一棟単位で使用するんだから、一棟単位で減価償却できる方法があっても良いのではないかと思うのだが…素人考えに過ぎるのだろうか?

8章では、残業手当の支払いを免れる手段として、「名ばかり管理職」の次に来る?手として「名ばかり取締役」が考えられることから、原則損金算入不可、給与以外の形態でも給与認定される可能性がある、などの、役員給与に対する法人税法上の制約についての解説へと話がつながっている。経営者側のお手盛りを防ぐ意味で制約が必要と言うのは理解しやすいところ。まあ、「取締役」までしてしまうと、会社経営に口が出せてしまうので、「管理職」ほど簡単にはできないのではないかと思うのだが…。

9章では、夜遊びの話から、交際費、寄付金、使途秘匿金等の話に行く。税法上の寄付金概念が、通常観念する寄付金の範囲よりも広いと言うのはちょっと意外だった。ペナルティが重いのは当然なんだろうけど。

10章では、債務者の倒産状態から、貸倒損失と貸倒引当金処理の話へ。前者についてはいつの時点で、という見切りが難しいので、裁判所決定まで待つというのもある意味やむを得ないだろうけど、政策的に早めに見きれるようにできたほうが、連鎖倒産とかを防ぐ意味でも有用なのではないだろうか…。

11章では、「投資の時代」という謳い文句から資産の価値が下がった場合の処理について話が及んでいる。このあたりは正直まったくと言って良いほど、自分との接点が見つからず、イメージしにくかったが、ともあれ、税務署の判断が予測しにくく、結果として制度がうまく機能していない面があることはわかった。

12章では、「圧縮記帳」による節税対策の問題点についてのコメント。著者の考える有効な節税効果は次のようなものらしい。
  1. 課税の繰り延べではなく、永久に税負担が減少するものであること
  2. 会社が余計な支出をしなくていいもの
  3. 会社の損益計算書に損失が計上されないもの
この定義は、かなり厳しいというか、クライアントによっては、この条件を満たさなくても良いという判断をしそうに思える。短期的に資金繰りに問題がある場合、課税の繰り延べが重要なことがあるだろうし(この点は著者も指摘しているが)、費用対効果を見て、それなりに納得できるものであれば(社員旅行のように)、支出をすることもOKというケースや、損失計上をしても構わないとうするものもあるだろう。
その一方でご自身が推奨する自己株式買取を利用する方法については、よくわからなかった。「買い取り方や発行会社の状況にもよりますが」と形で曖昧なのが気になった。うかつにこの記載を鵜呑みにしてトラブルになるのを避けたと見るべきか?

13章では、申告に関する問題点についての指摘がある。修正申告と更生の違い(前者は納税者が行い、後者は税務署が行うもの)は恥ずかしながら知らなかった。また、「見解の相違」まで社会悪の「申告漏れ」として報じられるのは確かに問題だと思う。ある意味では制度が不明瞭なことが問題というケースもあるだろうから。

取り上げられていなかった話題では、研究開発費の扱いとか、関連してライセンスにまつわる費用の扱いとかがあるが、その辺は上記の話よりも世間的にはマイナーな話で取り上げられなかったとしてもやむを得ないのだろう。

いずれにしても法人税の制度がわかりにくいのは事実で、この本が経理系の方々以外にとっての、法人税法を理解するためのとっかかりになるのではないかと思った次第です。

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hitorihoumuさま、こんにちは。
個人的には、税務上の考慮がスキームを決めることが多いように思っており、法務も、税務の基本は理解しておいて損はないと考えています。
今後とも宜しくお願いいたします。

コメントありがとうございました。

「総務&法務担当の部屋」を運営しているhitorihoumuです。
コメントとトラックバックを頂きありがとうございました。

会計と税務はなかなか難しいテーマではありますが、
法務だけでなく、会計や税務にも明るい法務担当になるべく、
日々勉強に励んでいます。

読んで参考になった書籍等はどんどん取り上げていきたいと思いますので
これからもよろしくお願いします!
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