スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

もう一度:ライセンス契約のすべて 実務応用編/吉川 達夫 (編集), 森下 賢樹 (編集)

他のことにかまけて時間が相当経過して、ついでに、年もあけてしまったが、いまさらながら、一通り読み終わったので、残りの感想も含めてあげてみる。無駄に長い上に、一部再掲(第一部分)も含んでいるがご容赦を。不勉強をさらすだけの結果になっているが、まあそれも一興と思うことにする。

そうそう、senri4000さんの、この本へのコメントシリーズは有用なので、こちらのエントリよりも、そちらをお読みいただくことをオススメする(おいおい)。


第一部の部分はすでに書いたものの再掲だけではつまらないので、若干の補足もしてみた。

1.第1部について


1.1
出来高払いだと、個別の製品について、常にライセンスフィーを負担することになって、固定費と同じ状態になるというのはライセンシーにとってのリスクではないのだろうか?製法特許のライセンスを受けて製造したものの、その後後から別のより安価な製造方法が出てきたら、価格勝負の面でライセンスの存在が不利に作用するリスクはあるし、特に、ライセンスを受けた製法のために転用の効かない設備投資とかをしてしまうと、リスクになるのではないだろうか、という気がするのだけど、実際のところはよく分からない(そういう問題に直面した経験がない)。
→追記:僕自身はあまりライセンス契約を直にレビューした経験が多くないので、このあたりは想像でモノを言っていたのだが、senri4000さんからご指摘があったように、そういう心配をする必要はなさそうな感じ。

NEXIで知的財産権等ライセンス保険に加入することで、ロイヤリティの回収リスクの低減が図れることがあるというのは初めて知った。
→ただ、これが、実務面でこれがどの程度機能するのかは、検証が必要かもしれない。NEXIの別の保険で、実務と保険手続きとの間に埋めがたい乖離があって、保険を付保しても請求できなかったケースも経験しているので。

1.2
ライセンサー・ライセンシーのそれぞれの倒産リスクへの対応については、法制度上の問題のために、なんだか切れ味が悪いように思うが、実際は、妙案はないので、個別に交渉して対応するしかないということなんだろう。そのためには原則に戻って、日頃の関係を良好に保つことや、接触を密にすることで、先方の状況についての情報を多く取るというあたりが重要になってくるのであろう。

1.3
ライセンス契約のミニマムのチェックリストは、確かに便利。こうやって簡潔にまとまっているのは助かる。

1.4
独禁法の知財ガイドラインの解説も、実務上気になりそうなところをきちんと押さえてくれている感じである。

1.5
侵害の警告状の例は、わかりやすくinfringeと書いてある例が出ているけど、一言もinfringeと書いていない例もあると思う(うかつに書くと discoveryのための証拠保全義務が生じたり、相手方がフォーラムショッピングを行った上で無効確認訴訟を提起するリスクもうみかねないように思う)。このあたりはsenri4000さんあたりだともっといろいろコメントしてくれるのかもしれないけど。
→追記:この点については、senri4000さん曰く、最近はまず訴状をfileしてから交渉開始というケースが多いとのこと。なるほどねえ。確かにNPEの場合は気にする必要はないのかもしれない。


2.第2部について

そもそも、こういう失敗事例が出てくるのが、結構すごいことなのではないかと思う。仮に特定の企業名を分からないようにするとしても、企業側が嫌がるだろうから。こういう事例を読むと、レビューの時にやる「当たり前」の確認事項の重要性を再認識するとともに、レビューを依頼してきた側から、「なんでそんなこと訊くの?」と訊かれたときにも、こういう失敗事例について話に出せると、相手に対する説得力が出ると思う。

1章のサブライセンシーの話は、指摘は納得するけど、結構難しいような気がする。つまり、マスターライセンスを取ってくることとサブライセンシーと当座納得できる条件で合意するところまでで力尽きる、時間切れになるケースが多いのではないかと思ったりする…もちろんそれでは困るのだが。そういう場合でも、ここで指摘されているリスクがあることを認識したうえで、意思決定をすることと、リスクの存在に応じた事後の対応(倒産の兆候を見逃さないよう警戒し続ける等)が必要なのだろう。

2章については、まずは事前のFSが重要なのだろう。一方で、ノルマを達成できなかった場合の措置については、法務がそういう場合にいかなる措置が取れることが望ましいのか質問しても、ややもすると、質問をした相手から答えが出てこなかったりするのではないかと言う気がする(気がするばっかりだけど、ライセンスが実現したときの「バラ色の未来」を思い描くところまでしかできていないことが多いのではないかという気がしている)。とはいえ、最低限契約解除とか、条件の見直しの交渉はできる余地を確保するよう、事業部隊にアドバイスするのが法務の仕事なんだろう。

3章については、最恵待遇条項って、いつも疑問なのだが、何をもって、「最恵」か判断が割れたりしないのだろうか?自分から入れようとしたことがない(入れる必要がある状況に遭遇したことがない)のと、相手からその種の条項が入ったドラフトが来て、実際にそのまま締結したとしても、その条項が後から問題になったことがないので、どうもよく分からない。とはいうものの、入れておくと有用なことがあるのを理解するのは難しくないような気がする。

4章については、税金の話は、結局よくわからないので、詳しい経理の人を巻き込んで確認してもらうと言う形で処理する以外のことはしたことがないものの、注意しないといけないということはよくわかる。FSとかをする際に、早めに調べておくべき事柄なのだろう。

5章については、やはり、最低数量未達のときにどうするか、について、それだけたくさんの選択肢を考えつくかがポイントなのかもしれない、と思ったのと、agree to agreeはやはり危険ということだろう。agreeしなかったらどうなるか分からないわけだし。

6章については、表明保証条項でライセンスの維持をライセンサーに義務付けつつ、解除事由に含まれる形にしたおくのが、ライセンシー側にできる事前の手当だろうし、契約後はこまめに状況を確認するのも重要ということなんだろう。

7章については、ライセンス対象の定義と、ロイヤリティをどういう単位で課すかについて、詰めきれないとこういうことが起こるということなんだろうと理解した。

8章については、企業法務側と言うよりも、企業と契約するクリエイター側の問題と言えるけれども、企業側としてもあまり相手の無知に付け込むような真似をすると、後からトラブルの原因になりかねないので、「弁護士さんとかに見てもらったらどうですか」とか言って、相手が契約内容について、しかるべき手段で確認したことを確認しておいたほうがいいのかもしれない。

9章については、exclusive(exとか略したりすることもあるみたいだけど)でライセンスを与える場合の難しさを感じた。能力があるのと、それが実際発揮されるのとは別なので、そのギャップを埋めるための契約上の担保が必要というわけなのだろう。

...あまり面白い感想でなくてすみません。興味がある分野ではあるものの、まともなことが言えるほどの経験がないから感想がつまらないのだろう。


3.第3部について

第1章について箇条書きで。これまた大したコメントでなくてすいません。
  • ノウハウって、どうも鵺的なイメージと言うか、はっきりしないという感じが拭いきれないのだが、何が重要なのかはわかったような気がする(気がする、というのが一番危険なのだが…あとは実際にもっと経験を積むことが必要なのだろう)。
  • 引用されている坪田潤二郎氏の次の言葉が印象的。
    「ノウ・ハウのライセンスといっても、それは知識としてのノウ・ハウの使用を許諾を意味するものではなく、単に非公開の知識を相手方(ライセンシー)に対して海事することを意味するに過ぎない。」
    「要するに、ノウ・ハウのライセンスというとき、それは非公開の技術情報の開示と、それに関する技術資料(図面等)の使用許諾を意味するのであり、かつそれ以上の何者でもないのである。」

  •  ライセンスの話では、「そもそも」論は(別にライセンスに限ったはずではないけど)重要なのだろう。交渉に時間がかかると特に、「そもそも」論を忘れがちな気がするので、気を付けないといけない。
  •  ライセンスの開示の仕方は、不正競争防止法の「営業秘密」としての3要件との関係でも留意しないといけないし、部分開示という選択肢を取る場合には、どこまでが開示範囲で、どこからは非開示範囲なのか、を詰めておかないとトラブルの原因になるな、と改めて実感。情報の範囲とあわせて、対象の人間の範囲についても限定が重要ということも忘れないようにしないと(守秘契約で、情報開示対象をリストアップして、各人から誓約書を取ったりしたケースも見たことが有るなあ。それくらいやってもおかしくないケースがあるよね)
  • 技術流失防止指針」もう一度見ておきます。
  • 技術支援の有り様は難しいと言う気がする。特に相手方に自社ブランドでの製造をライセンスする場合は、自社ブランドの価値を維持するうえで、一定の品質が安定して出せるようになるまで、何度でも指導をしないといけないという状況もありうると思う。まあ、ある程度までは無償で、そこから後は実費負担として、あまりに出来が悪ければライセンス契約解除可能とできた方がいいのだろうが、設備投資とかしているケースでは、解除が難しい状況もあるわけで…。
  • 技術の保証との関係では、知財権に関する紛争への対応は、ライセンサーとしては、ライセンシーのその手の紛争にどこまで介入すべきか悩ましいのではないかと思う。介入出来る余地は確保しつつ、後は個別判断というのがライセンサーとしては良さそうに思うのだが、どうなんだろう?
  • ノウハウライセンス契約の終了時の扱いは、海外の場合は現地法制との整合性も重要な気がする。途上国でのライセンス実施となると、紙に書いてある法制だけではなく、もっとdown to earthな部分まで気にする必要がありそう。そんなところまでどうやって調べるのか、というのも難しいような気がする。
  • 自社技術とライセンスを受ける技術とのコンタミの防止は重要だけど、重要と言う以上のことが正直よく分からない。どうやって技術のコンタミを防ぐのか、そこまで法務として口を出した経験がないので、具体的なイメージが掴めないように思う。特にライセンスを受けるかどうか評価する段階では、社内の技術を持っている人間でないと評価ができないから、余計に危険なのではないかと言う気はするが…逆に導入段階であれば人的なChinese wallを作れるのではないかと思っているのだが…。
  • 開示の範囲との関係では、書面化、というのは限界があるという指摘には納得するものがある。言葉にできないノウハウってどうしてもあると思うからだが。ある程度の「遊び」は必要なのかもしれないが、オープン・エンドにならないようにする必要もあり…どのあたりでバランスさせるかが、悩ましいような気がする。
  • ライセンス契約の解除との関係ではResidualsの条項は、確かに必要と思うけど、経験が少ないこともあってか、見た記憶がない…。
  • p85にノウハウの権利は弱い、とあるのだが、確かに排他性がないけど、その分、要件を満たす限りは、時間の制約を排除できるので、権利として弱いという評価で良いのかどうか、気になった。
・・・ただ単に僕の経験不足ぶりが露呈しているだけの感想になっているが、気にしないということで。

第2章については、前著を読んでいないので(買ってあるがまだ読めていない(滝汗))、うかつにコメントしにくいが、コンパクトにまとめている関係で、バリエーションの幅には限界があるのだろうが、単体で読んでも有用な作りにはなっていると思う。個々の条項についても箇条書きで感想を。
  • 競業避止義務のところでは「類似」の概念を定義する必要があると書いてあるけど、実例がないのが残念な気がする。必要性はすぐに理解できるものの、実際の条項を作るのが難しいと思うので、参考例があったほうが良いのではないか(前著に記載があったりするのかもしれない)。
  • ライセンス契約に売買部分が含まれている場合を想定して、CISGの適用を排除する規定をvariationで用意しているのは、時期的に当然なのだろう。

4.第4部について
かなり簡潔にまとめているので、条項案については、細かいところは、さらに詰めがいりそう(例えば、いくつかの用語についてはおそらく定義規定が必要そうに見えるし、技術支援に関するところは、旅費の詳細(飛行機のクラスとか)まで決めておくべきとコメントしつつもサンブルではその辺りは記載がないから)だけど、サンプルとサンプルを見ううえでポイントになるところについてのコメントがあるのは有用かと思う。

1章については、それぞれの前提になっているビジネス状況についてのコメントがないと読み解きにくいと思う。執筆者の方々にとっては自明かもしれないが、それぞれの業界の状況に明るくない読者にとっては、そのあたりまでフォローがあるとより読みやすいと思う。特に2番目の契約サンプルについては、有効期限の設定等について、テクノロジーの陳腐化のスピードが関係している部分があるのではないかと思うけど、その辺りは正直業界外の人には分からにくいのではないかと思う。

2章については、このエリアの契約の実務をしたことがないので、ますますもってコメントしにくいが、10条の権利保全のための措置のところは、もう少し細かく説明が有った方が、このエリアに知見のない読者にとっては親切だと思う。色々規定があって、それぞれ想定している事態に対応するために設けられているわけだが、何を想定しているのか想像しにくいように思うので。

3章については、案文がさらっとしすぎていないかという気がした。解説にあるように、薬事承認が得られるまでに多くのステップを踏む必要があるのならば、その途中で開発継続が困難になった場合、契約解除になるのは良いとしても、解除後の措置についての規定、特に開示した情報の扱い等についての規定とか要らないのかな、ということが気になった。

4章については、ロイヤリティのシェアについての契約書って、あまり見た記憶がないのでうかつなことは言いにくいが、前提となっている共同開発契約にどこまでのことが書いてある前提なのかが気になった。

5章については、クロスライセンス契約の文案、相手方当事者名がXYZとDEFとごっちゃになっているような気がします(僕が読んだのは第1版第1刷)。

コメントの投稿

非公開コメント

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

dtk

Author:dtk

日本にある企業の法務部署で働いています。
*コメント等で私に言及するときは
"dtk"でお願いいたします。

旧ブログ

ITエンジニアのための契約入門 iPod touch/iPhone用にリリースされました。詳しくはiTunesAppStoreから入手可能

初めてコメントいただく際には「このblogについて」もご覧いただければ幸いです。

カビバラさん時計
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
月別アーカイブ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

twitter
    follow me on Twitter
    カウンター
    Amazon.co.jp

    ブログ内検索
    RSSフィード
    リンク
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。